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高級茶ほど、低い温度で入れるのはどうして?「静岡茶いち」

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お茶によってお湯の温度を変えるのはなぜですか?

(お茶の入れ方基礎知識)

 「高級なお茶ほど、冷ましたお湯で、ゆっくり入れましょう!」、よく聞くお茶の淹れ方ですね。
  また、玄米茶、ほうじ茶、番茶などは、熱いお湯で短時間に淹れるのが良いといいます。

 なぜ、冷ましたお湯なのでしょう? どうして、ゆっくりと淹れるのでしょうか?番茶は、なぜ、高温でサッと入れた方が良いのでしょう?

 じつはこの淹れ方、日本茶の代表的な味成分、アミノ酸とカテキン類の特性を上手に利用したお茶の淹れ方なのです。

 お茶には、多くの味成分、香り成分が含まれており、そのバランスでお茶の味が決まるのですが、中でも代表的な味成分が、うま味やあまみの成分であるアミノ酸と、苦渋味の成分であるカテキン類です。

 アミノ酸は低い温度でも溶けやすいのに対し、カテキン類は比較的高温で溶けやすくなる特性があります。
 また、お茶の持つカテキン類には数種類があり、特に苦みが強く含有量も多いエピガロカテキンガレートは、特に高温で溶けやすい成分です。

 つまり、お湯の温度が高いほど、カテキン類が多く溶け出し、苦渋味が強くなるのです。

 また、上級茶と、番茶などの下級茶では、それぞれの味成分の含有比率が大きく違います。
 アミノ酸は上級茶に多く、下級茶の数倍の量を含んでいますが、一方のカテキン類は、上級茶、下級茶共にかなり多くの量を含んでいます。

 つまり、上級茶は、アミノ酸とカテキンの両方を多く含んでいるので、熱いお湯で淹れると、うま味成分だけでなく、苦渋味成分も多く出てしまい、上級茶本来の持ち味である、濃厚なうま味を殺すことになってしまいます。
 したがって、ぬるめのお湯で、ゆっくりとアミノ酸のうま味を引き出すように、淹れるのが良いとされています。

 一方、下級茶は、元来アミノ酸をあまり含んでいません。
 したがって、熱いお湯で一気に淹れることによって、香りを引き出すと共に、カテキンのさわやかな苦渋味を楽しむ入れ方が一般的なのです。

 ただ、私は、「お茶の温度そのものも、重要な“味”のひとつ」だと思っています。

 私自身、少々ぬるめの番茶を大きな湯のみでガブガブ飲むのが好きです。
 また、せんべいなどを食べながら、熱いお茶をフーフーして飲むのは、寒い季節の楽しみですし、冷たい水でゆっくりと淹れたお茶も、夏にはぴったりですね。

 お茶の淹れ方の基本や理屈は、まず頭に入れておきたいのですが、一般的に言われる“おいしいお茶の淹れ方”だけに固執するのではなく、自分の好みに合った“おいしいお茶の淹れ方”を見つけて、お茶をよりいっそう楽しんで下さい。

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数値から淹れ方をみる

 上記でお話ししたことを過去に行われた実験から、具体的な数値をふまえてみてみましょう。
 なお、この実験時には、カテキンではなく、タンニンという言葉を使っていたので、以下タンニンを用います。

 表1 浸出条件による タンニン÷アミノ酸の比率 (茶研報No.37)

 表1では、上級煎茶6gを4段階の温度の湯180mlで、浸出時間を変えた場合のタンニンとアミノ酸の比率を表しています。

 少しわかりにくいのですが、数字はお湯に溶け出したタンニンの量÷アミノ酸の量です。数字が大きいほどタンニンの割合が多く、小さいほどアミノ酸の割合が多いということです。
 言い換えれば、数字が大きいほど苦渋味が勝っており、逆に数字が小さいほどうま味が勝っているといえます。
(タンニンが多くても、アミノ酸が多ければ苦渋味が軽減されることから、お茶の味は、味成分単独の濃度のほか、それぞれの比率のバランスが重要だといわれており、そのことからこの実験が行われたのだと思われます。)

 ここでは、 お湯の温度と浸出時間の違いで、うま味の成分アミノ酸と、苦渋味の成分タンニンの溶け出す割合に、どのような傾向があり、お茶の淹れ方で味にどのような変化が出るのかを確認します。

●ポイント1
 湯温が高いほどタンニンの比率が高くなる、逆に湯温が低くなるほどアミノ酸の比率が高まる。
●ポイント2
 40℃、60℃の低い湯温では、旨味の成分アミノ酸の比率が高く。浸出時間が長くなってもタンニンとアミノ酸の比率はあまり変わらない。
●ポイント3
 80℃、100℃の高い湯温では、苦渋味のタンニンの比率が高く。浸出時間を長くするほどタンニンの比率が高くなる。
●ポイント4
 全体的にみると、タンニンの比率は時間よりも温度の影響のほうが大きく、特に80℃を越すと急速に高くなる。
●ポイント5
 お茶に含まれるカテキンには数種類があり、特に苦みの強く含有量も多いエピガロカテキンガレートは、高い湯温で溶けやすい成分であることもふまえておきたい。

 表2 煎茶の種類によるアミノ酸、カフェイン、タンニン含量(茶研報No.37)

 表2では、上級、中級、下級茶のアミノ酸、カフェイン、タンニンの含有量を表してあります。
 お茶のランクによる、それぞれの成分の含有量の違いに注目して下さい。

 ※カフェインは、苦みの味成分で、後味の良い苦みが特徴と言われており、比較的低い温度でも溶けやすい成分です。

●ポイント6
 うまみ味成分アミノ酸は、お茶のランクにより3倍近くの差がみられるが、苦渋味の成分であるタンニンは、お茶のランクの違いによる差はほとんどない。

その他
●ポイント7
 お茶は、熱いお湯で淹れる方が香りが強く出る。

以上の実験やポイントから
 お湯の温度や時間を変える事で、うま味と、苦渋味のバランスが大きく変わる事がわかりました。

 さらに、お茶の種類(ランク)により、味成分の含有量が違うため、お茶の種類に合わせて、淹れ方を変える事が大切だとわかりましたね。

 特に、上級茶の場合、80℃以上の温度で淹れると、苦渋味の強いお茶になってしまうため、さましたお湯で淹れる事が、上級茶が持つ本来のうま味を楽しむためには大切な事がわかりました。 

 お茶の淹れ方の理屈はご理解いただけましたか?

 あとは実践で、自分好みのお茶の淹れ方を見つけて、お茶をよりいっそう楽しんで下さい。

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